好きな人の彼女が気持ち悪すぎてゲロを吐いた話

有紀は毎回海斗が歌うと勝手にハモってオーナーに怒られて拗ねるのだが、昨日はいつもと違った。有紀が歌っているところに海斗がハモって楽しそうな顔をしていた。オーナーが怒るより先に私が怒鳴った。このヒステリックはうちの母親譲りだなあとぼんやり悲しくなりながら、思いつく限りの罵声を放った。

「ねえなにしてんのバカじゃねえのお前同じことされてこの前キレてたじゃねえかよなんでだよなんで人にはするんだよ調子乗らせてどうすんだよ彼女がバカなら彼氏もバカって言うしな死ねよもう帰る二度と来るかよクソ野郎」

みたいなことを言ったと思う。血圧が上がって酒が回った。有紀が後ろで北叟笑んだ気がした。海斗は一瞬呆れたような人を小馬鹿にしたような顔をして、またいつもの営業スマイルに戻った。切り替えが気色悪かった。仕事人だなあと思った。

問題はその後だ。早朝家路に着きベッドに飛び込みそのまま眠りこけ、酒で痛む頭を抱え昼過ぎに起床した。海斗は普通だった。なんとなく監視垢を開き、有紀の裏垢を見た、のが、間違いだった。

あ、こいつ、私がストーリー見てるの気づいてるじゃん。

キャバクラでよく見る顔。厭らしく笑った勝ち誇った女の顔だった。

呼吸がおかしくなった。過呼吸だ。喉が、目の奥が、内臓が、気持ち悪い。熱くて痛くてビリビリして、袋を用意する余裕がなく、ベッドにそのまま吐瀉物をぶち撒けた。固形物を食していなかったので、ジャバジャバと嫌な匂いのする水をただただ吐き出した。

はあ、はっ、はあ、すぅ、はあ、はー、はあ、ふう、はぁー、

これ以上書くと、またゲロを吐きそうなのでもうやめる。死ね




キャバクラにゲイが来た話

言おうか言わまいか迷ったのだが、つい先週私の勤めているキャバクラにゲイの男性が来た。歳は20代前半とかなり若く、前髪にはクロミちゃんのヘアクリップを付け、NieRの派手なシャツを着て、ピンモンにストローを差して飲んでいた。

名をゆうあちゃん(仮)と言った。初めてのキャバクラらしく、かなり緊張しているようだった。

周りのキャストは何故キャバクラ?メンパブに行けばいいのに、などと話していたが、やはり男性1人でメンパブは敷居が高いと思うし、ボーイがホールに来る度我々キャストにあの人カッコイイ!とか、あの人セクシー!などとわざわざ報告してきたので、ゆうあちゃんはきっと歳の近い女性といわゆるガールズトークをしたいタイプなんだなぁと思った。

うちの店はボーイの顔面偏差値が高いことで有名で、新規の客には毎度「この店の黒服はホストみたいだなあ」と言われていた。全員メンパの店員なのであながち間違いではないが。

海斗を見ては「あの人すっごくスタイルいい!顔も小さい!モデルさんみたーい!」、士郎を見ては「あの子メッチャ目鼻立ち整ってる!ノリもいい!付き合うならあーいう人がいいなぁ」、壱成を見ては「あの子ジャニーズにいそう!すごいなかなかいない美形!」、一真を見ては「あの人の色気やばーい!抱かれたい!いい男ー!」、来海を見ては「あの子かわいいー!犬系男子ってやつ?よしよししたーい!」、ぎゃわさんを見ては「あの人の塩顔めっちゃ好き!韓国系ってやつ?おしゃれ!」などと、褒めちぎってくれた。あいつらすぐ調子に乗るからやめてほしい。もちろん閉店後調子に乗っていた。単純すぎる。

幸いなことに、LGBTQに偏見のある人間はうちの店にいなかったので、ゆうあちゃんは随分満足してまた来るねー!とキャッキャして帰って行った。またなゆうあちゃん。今度一緒にもかめろとメンパ行こうな。

終わり

みーちゃんに頼まれて書いたやつ、ほろ酔いド偏見コラム

私は童貞が嫌いだ。エロ漫画やエロ動画といった、自慰に使う為の誇張された性行為しか知らない故に女性に対する理想像が並外れて高いからだ。


私は片手に収まるほどの女を知ってきた経験者が嫌いだ。たった数人の女を抱いて世界中の女を知ったような気になって天狗になっているからだ。


私はヤリチンが嫌いだ。女性器のある人間は全員この俺が統轄出来るといった、間違った倫理観を持って女性を傷付けることを拒まなくなるからだ。


さて、話題は変わるが、ここで童貞処女に対する偏見を述べようと思う。気分が悪くなる方も勿論いると思うので、そういう輩はすぐさま閲覧をやめてほしい。頼んだで。


私が思うに、先程話した通り童貞は気持ちが悪い。実に阿呆で自分の知っていることが世の当たり前だと思い込んで、性交渉の経験のない自分を正当化している。これは処女にも通ずるものがあるのかも知れないが、全ての物差しを自分の知識経験で狭めるのは男性によく見られる傾向だと思う。あとシンプルにキモい。死んだらいいのに。


処女は童貞とほぼ同じだが、こじらせ具合で言うと、童貞よりもタチが悪いと思う。セックスに夢を見すぎている。また、自分磨きが甘かったり、どこかで男性のせいにして自分の都合のいいように解釈をする節があるように思われる。全員理想が高い。選ばなきゃ女として産まれた以上デブでもブスでも性格悪くてもヤれるのに。ごめんな全部偏見だわ殴らないでね。


童貞食い。処女フェチ。人の性癖は多種多様だが、一生理解出来ないなともかめろは思う。つーか人の性癖なんて理解出来る方がまず珍しいだろ。もかめろは好きな男の小便を風呂上がりの麦茶くらいガブ飲みするのが好きです。死ね。



昨日の話

初めはほんの少しの抵抗心だった。通り過ぎる度舌打ちをされたから、全身を値踏みするように睨まれたから、聞こえるような声で陰口を叩かれたから、その全てが客に対しての態度ではなかったから、まるで女同士のそれだったから、腹を立てただけだった。何が悪いのか正直今でも理解出来ていないし、特に後悔はしていない。どっちみち殺す予定でいたし、彼から面倒臭がられるのも知っていたし、私は結局そういう奴なのだ。


三時、彼女という立場を利用して被害者面をして責任を擦り付けて泣き寝入りする、そんな彼女を改めて愚かだなと思った。惨めだなとも思った。タバコがいつもより苦い。二本しか入っていない歪んだ箱をタクシーの外に放り投げ、北叟笑んだ。一番惨めなのは私だった。


日曜日、ドン・キホーテのしょぼい美容室で伸びきった髪を切るのも、もう数滴しか残量のない香水を新たに買うのも、しょうがねぇからお前のも買ってやるよと指切りをしたくせに機嫌が悪いのを理由に自分の物しか買わないのも、足りなくなった食器用洗剤を買い足すのも、全部知っている。彼の家から目的地までの最短ルートも、そこが工事中で少し遠回りになるのも、少し天気が荒れていてそれが彼の機嫌を更に損ねるのも、全部全部全部知っているのだ。彼女よりも彼を知っているのだ。彼女よりも先に出会っているのだ。彼女よりも体を重ねているのだ。彼女よりも顔が可愛いのだ。彼女よりも仕事が出来るのだ。彼女よりも私の方が優れた人間なのだ。


不意に手首を切りたくなったが、そんな事をしても彼女が喜ぶだけだし、彼からは尚更嫌われてしまうので、床に転がっているぬいぐるみをボコボコにして、やめた。部屋の掃除をしないと、と思ったけれど、今の私には無理だった。


少し薄暗くなった外を睨んだ。紫煙が空を覆った。風が冷たい。まだまだ五月だった。




掃き溜めなので糞便でもしながら見てね

担当のためとは名ばかりで、勿論担当に金と時間を費やすために働いているというのは嘘ではないが、コンビニと比べて遥かに高い時給、歳の近い女たちと自身の魅力で競わされるという半ば野性的な仕事内容、各々様々な考えを持ち、酔うことでそれを露見させる客たち、それらの雰囲気が私は好きだった。楽しかった。気持ちよかった。達成感、優越感、疲労感、劣等感、それらが私にとっての快感だった。若い女体を小汚い男たちに消費されるというのはやはり良い気分はしないし、酒が回り脂で顔を光らせ、目を血走らせ、在りもしないサービスに胸と股間を膨らませる客を見るとみっともないなと思う。酒の匂いと香水の匂い、それらをかき消そうと聳え立つ、吐瀉物の匂い。そんなのは気怠い昼職に比べたら、極楽だった。


死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい


疲れた。足が痛い。頭も痛い。苦痛だ。具合が悪い。目が開きづらい。なんでこんなになるまで頑張っているのだろう。この仕事が好きなのに。担当が好き。欲が湧く。金がいる。金がいる。金がいる。


担当は私のことを絶対に好きにはならないし、仮に好きになってくれたとしても私は蛙化現象とかいうふざけた状態に陥る。どっちみち救われない。負のループである。馬鹿らしい。


しごとがすきなのにもうなにもしたくないです



キャバクラと嫌な女と担当と私とカッター

私は元はと言えば、地元秋田で夜の仕事をするつもりはなかった。身バレが怖いし、何よりとんでもない田舎なので稼げないとも思っていたのだ。


だがひょんな事から知人男性(こいつはメンズパブで働きつつキャバクラの黒服もやっていた)からスカウトされ、まずまずの好条件だったし何よりも高身長で顔も好みだったのであっさりとそれを承諾してしまった。後にその知人男性は今の私の担当となる。それが全ての間違いだった。


スカウトされた翌日。昼のバイト帰り、夜19時に近くのコンビニで待ち合わせをした。そいつはおよそ20分ほど遅れてやってきた。夜の繁華街に溶け込む黒いスーツ、黒光りするいかにも高そうな革靴、Paul Smithのオフィスバッグ、長い首に沿う襟足、綺麗な形の頬には赤く痣が出来ていた。


「はじめまして、タバコ買ってください。」

私は咄嗟にそう放っていた。初対面の強面の男にタバコを強請る図々しさは今思うとキャバクラで売れるには必須だったんだなぁとさえ思う。ただ無言で明るいコンビニから未知のビルに入るのがとてつもなく怖かった。痣のことはまだ触れないでおいた。


「何吸ってんの?赤マル?おれと一緒。」

そいつは何の気なしに店員に番号を言う。私はソフトで!ソフトでお願いします!と必死に店員に叫んだ。あいつはスーツのポケットからボックスの赤マルを取り出し、変な顔をしていた。それが最高に格好良かった。地獄か。


「あの、その痣どうしたんですか?痛そう。」

やっちまったと思ったがもう遅かった。そいつは自分の頬を利手で摩り、

「ああこれ。客にやられたんだ。馬乗りになって往復ビンタされたんだよ。こえーよなぁ。」

そいつはケラケラ笑いながらそう言った。状況が飲み込めず疑問しか残らなかったが、恐らくメンズパブに来店した女性客にやられたのだろう。相当酷い営業をしているのだと初対面のそいつに不信感が募った。


じゃあそろそろ行くかとコンビニを出て、すぐ隣のビルへと入った。カツカツと軽快に革靴を鳴らしながらガチャンと重い音を立ててドアを開けた。店内はオーロラのような照明が大理石の床に反射し、酒と香水の匂いが充満したホールを着飾るように、または威嚇するように、ビカビカと光っていた。


待機所には女が数名いた。彼女らははしゃぐこともなく新人?と尋ねてきやがった。その無関心そうな目が気に食わず、はァそうですけどもと適当に遇い、用意された安臭いドレスのチャックを開け、転がっていた適当なキャバヒールに足を通した。


体験入店だったのだがシャンパンを開けることに成功し、その日から私は晴れて売れっ子となった。ものの1ヶ月弱で3位となり、周りの女達からは反感を買った。それが心地よく、天職だと高を括っていた。あの野郎もそれを喜んでいた。その時はそれで良かった。


徐々に私は帰宅するのが遅くなっていた。あのゲス男と関係を持つようになっていたのだ。


私はハードワークの中毎日のように泥酔していた為、何が事の発端なのかはよく覚えていないのだが、その日を境におれの店来てみない?と誘われ、上機嫌だった私はそれに乗った。そこで私は絶望して数ヶ月ぶりにリストカットをするようになる。


その店は、メンズパブとは名ばかりで、女性のキャストも数人いた。幸か不幸か女性キャスト達はほぼ全員知り合いで、ボックス席に案内された私はふらつく足と痛む頭をヘパリーゼで誤魔化して何とか席に着いた。


数十秒で奴は私の向かいに座った。風俗店であるホストクラブとは違いメンズパブは飲食店の為、隣に座ることは出来ないと言った。そんな事はどうでも良くなった私はキャバヒールで疲れた足を踏み締めそいつの隣に座った。私は客なのだ。この場では何をしても金を払っているのだから許されるべき存在なのだ。嘗て痛客が放った妄言を反芻し、奴の薄い唇と自分の物を重ねた。


不幸な事に、そいつの彼女もその店でキャストとして働いていた。奴の頭越しに彼女と目が合ったが、目を逸らした途端私の負けのような気がして舐めるように彼女の顔を睨んだ。あんたは彼女だけれども、今ここで接吻しているのは私なのだと言わんばかりに酒で血走った目を向けた。クソ野郎はそれに気付き、おい馬鹿と言わんばかりに私に視線を向けた。丁度灰皿がいっぱいになった頃に私は帰ると金を投げ捨て外に出た。腹が立ったのだ。


風が煩い螺旋階段で再び接吻をした。今度は生温い唇の感触と背の高いそいつが屈む体制がよく見えた。同時に私の下腹部に硬直したそれが当たるのも確認した。優越感と性欲と酒が回る感覚にうっとりしていると後方から男性キャストの声が聞こえた。


「海斗さん通れませーん!」

だってぃ(26)。邪魔をするな良い所だろうが。そう思ったがそれを言ったら雰囲気が今度こそぶっ壊れるので私はだってぃにまた来るねと3位のキャバ嬢スマイルを投げかけ、タクシーに転がるように乗り込んだ。タクシーの中でオナニーしてやろうかと思うくらいには悶々としていた。それはあのゴミ野郎も同じだった。


その後も店が終わる度私達は性的な戯れをするようになった。フェラチオで終わる日もあれば、ホテルで猿の如く抱かれる日もあった。射精を済ませタバコに火を付けた彼は寂しそうな顔で私にある種の告白をした。彼女と2ヶ月も性交渉していないらしい。所謂セックスレスだった。私は18年間生きてきた中でも最高級の良い気分だった。初めてマリファナを吸った時よりも断然エクスタシーを感じた。


私は今もキャバクラを続け、メンズパブに通っています。これだけ大金を使っても彼女に勝つことはなく、あのクズの時給をあげることに成功してもそれは彼女との生活費に宛てられるのです。性行しているのは私の方なのに。なんちゃってヂュポ!それを慮り早朝6時の空を見上げると瞼の下から愛液と同じ色の汁がとめどなく溢れるのです。これはきっとセックスなのでしょう。なかなか来ないLINEを待ち、私は今日もカッターを鳴らすのです。


終わり(人生)






キャバクラと嫌な女と担当と私とカッター

私は元はと言えば、地元秋田で夜の仕事をするつもりはなかった。身バレが怖いし、何よりとんでもない田舎なので稼げないとも思っていたのだ。


だがひょんな事から知人男性(こいつはメンズパブで働きつつキャバクラの黒服もやっていた)からスカウトされ、まずまずの好条件だったし何よりも高身長で顔も好みだったのであっさりとそれを承諾してしまった。後にその知人男性は今の私の担当となる。それが全ての間違いだった。


スカウトされた翌日。昼のバイト帰り、夜19時に近くのコンビニで待ち合わせをした。そいつはおよそ20分ほど遅れてやってきた。夜の繁華街に溶け込む黒いスーツ、黒光りするいかにも高そうな革靴、Paul Smithのオフィスバッグ、長い首に沿う襟足、綺麗な形の頬には赤く痣が出来ていた。


「はじめまして、タバコ買ってください。」

私は咄嗟にそう放っていた。初対面の強面の男にタバコを強請る図々しさは今思うとキャバクラで売れるには必須だったんだなぁとさえ思う。ただ無言で明るいコンビニから未知のビルに入るのがとてつもなく怖かった。痣のことはまだ触れないでおいた。


「何吸ってんの?赤マル?おれと一緒。」

そいつは何の気なしに店員に番号を言う。私はソフトで!ソフトでお願いします!と必死に店員に叫んだ。あいつはスーツのポケットからボックスの赤マルを取り出し、変な顔をしていた。それが最高に格好良かった。地獄か。


「あの、その痣どうしたんですか?痛そう。」

やっちまったと思ったがもう遅かった。そいつは自分の頬を利手で摩り、

「ああこれ。客にやられたんだ。馬乗りになって往復ビンタされたんだよ。こえーよなぁ。」

そいつはケラケラ笑いながらそう言った。状況が飲み込めず疑問しか残らなかったが、恐らくメンズパブに来店した女性客にやられたのだろう。相当酷い営業をしているのだと初対面のそいつに不信感が募った。


じゃあそろそろ行くかとコンビニを出て、すぐ隣のビルへと入った。カツカツと軽快に革靴を鳴らしながらガチャンと重い音を立ててドアを開けた。店内はオーロラのような照明が大理石の床に反射し、酒と香水の匂いが充満したホールを着飾るように、または威嚇するように、ビカビカと光っていた。


待機所には女が数名いた。彼女らははしゃぐこともなく新人?と尋ねてきやがった。その無関心そうな目が気に食わず、はァそうですけどもと適当に遇い、用意された安臭いドレスのチャックを開け、転がっていた適当なキャバヒールに足を通した。


体験入店だったのだがシャンパンを開けることに成功し、その日から私は晴れて売れっ子となった。ものの1ヶ月弱で3位となり、周りの女達からは反感を買った。それが心地よく、天職だと高を括っていた。あの野郎もそれを喜んでいた。その時はそれで良かった。


徐々に私は帰宅するのが遅くなっていた。あのゲス男と関係を持つようになっていたのだ。


私はハードワークの中毎日のように泥酔していた為、何が事の発端なのかはよく覚えていないのだが、その日を境におれの店来てみない?と誘われ、上機嫌だった私はそれに乗った。そこで私は絶望して数ヶ月ぶりにリストカットをするようになる。


その店は、メンズパブとは名ばかりで、女性のキャストも数人いた。幸か不幸か女性キャスト達はほぼ全員知り合いで、ボックス席に案内された私はふらつく足と痛む頭をヘパリーゼで誤魔化して何とか席に着いた。


数十秒で奴は私の向かいに座った。風俗店であるホストクラブとは違いメンズパブは飲食店の為、隣に座ることは出来ないと言った。そんな事はどうでも良くなった私はキャバヒールで疲れた足を踏み締めそいつの隣に座った。私は客なのだ。この場では何をしても金を払っているのだから許されるべき存在なのだ。嘗て痛客が放った妄言を反芻し、奴の薄い唇と自分の物を重ねた。


不幸な事に、そいつの彼女もその店でキャストとして働いていた。奴の頭越しに彼女と目が合ったが、目を逸らした途端私の負けのような気がして舐めるように彼女の顔を睨んだ。あんたは彼女だけれども、今ここで接吻しているのは私なのだと言わんばかりに酒で血走った目を向けた。クソ野郎はそれに気付き、おい馬鹿と言わんばかりに私に視線を向けた。丁度灰皿がいっぱいになった頃に私は帰ると金を投げ捨て外に出た。腹が立ったのだ。


風が煩い螺旋階段で再び接吻をした。今度は生温い唇の感触と背の高いそいつが屈む体制がよく見えた。同時に私の下腹部に硬直したそれが当たるのも確認した。優越感と性欲と酒が回る感覚にうっとりしていると後方から男性キャストの声が聞こえた。


「海斗さん通れませーん!」

だってぃ(26)。邪魔をするな良い所だろうが。そう思ったがそれを言ったら雰囲気が今度こそぶっ壊れるので私はだってぃにまた来るねと3位のキャバ嬢スマイルを投げかけ、タクシーに転がるように乗り込んだ。タクシーの中でオナニーしてやろうかと思うくらいには悶々としていた。それはあのゴミ野郎も同じだった。


その後も店が終わる度私達は性的な戯れをするようになった。フェラチオで終わる日もあれば、ホテルで猿の如く抱かれる日もあった。射精を済ませタバコに火を付けた彼は寂しそうな顔で私にある種の告白をした。彼女と2ヶ月も性交渉していないらしい。所謂セックスレスだった。私は18年間生きてきた中でも最高級の良い気分だった。初めてマリファナを吸った時よりも断然エクスタシーを感じた。


私は今もキャバクラを続け、メンズパブに通っています。これだけ大金を使っても彼女に勝つことはなく、あのクズの時給をあげることに成功してもそれは彼女との生活費に宛てられるのです。性行しているのは私の方なのに。なんちゃってヂュポ!それを慮り早朝6時の空を見上げると瞼の下から愛液と同じ色の汁がとめどなく溢れるのです。これはきっとセックスなのでしょう。なかなか来ないLINEを待ち、私は今日もカッターを鳴らすのです。


終わり(人生)